イギリス 花の庭



 イングリッシュガーデンには、人の心をとらえて離さないロマンティックな魅力があります。この素晴らしさに魅せられて、日本でもガーデニングを楽しむ人々が何と多くなったことでしょう。私もその一人で、1985年にハーブの勉強のためイギリスを訪れて以来、歴史の風雪をくぐり抜けてきた数多くの庭と、上流階級から市民に至るまで庭造りにかける情熱の強さにすっかり心を奪われてしまいました。
 ところで、今や気軽に使うようになったイングリッシュガーデンという言葉ですが、いったいどのような庭なのでしょうか。詳しくは、のちおど事例を挙げながら解説いたしますが、これには二通りの定義があります。
 一つは英国庭園史の中に位置づけられる本来の意味で、十八世紀に流行した"風景式庭園(ランドスケープガーデン)"を指します。十六〜十七世紀までの王侯貴族の庭は、イタリアやフランスを模倣した幾何学模様の"整形式庭園(フォーマルガーデン)"が主でしたが、ようやく英国独自の絵画的な庭が生まれたのです。なだらかな丘に森や池を作り、廃虚や洞窟を配した壮大な庭園は一世を風靡し、イングリッシュガ−デンと呼ばれました。
 もう一方は、現在私たちがあこがれているパステルカラーの花々が咲き乱れるロマンティックな"田舎風庭園(コテイジガーデン)"のスタイルです。
 これは十九世紀女流園芸家の偉大なパイオニア、ガートルード・ジェークルの影響を受けたもので、「サッチ」と呼ばれるわら屋根などのこぢんまりした家を囲むように、果樹や芳香花木などと、草花や球根、ハーブに野菜を植え込んだ優しい色調の庭といえましょう。今一般的にイングリッスガーデンといえば、このように自然と調和し暮らしに根ざした心和むナチュラルな雰囲気の庭を指しているようです。

ーはじめに「イギリスの庭に学ぶ」より抜粋




《 目次 》
 ばらの国、英国
 イングリッシュガーデンとは
 女流園芸家の仕事
 カラースキムの研究
 庭のある豊かな暮し
 英国の庭を旅する


この本は12年間かけて取材し、1997年に文化出版局から出版した同名の本を底本にしています。

著者:
発行所:講談社
価格: \1040円 (税込)
size:15 x 11 (cm)
ページ数:210p

イギリス 花の庭

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